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Q.葬儀費用を支払うと相続放棄ができなくなるか?

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「葬儀費用を支払うと、相続放棄ができなくなりますか?」とのご質問を法律相談で受けることがあります。

相続人が「相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなります(民法921条1号)。例えば、裁判所は、遺産の債権の取り立て、遺産分割協議をすること、相続財産の家屋の取り壊しが処分にあたると判断しています。
そこで、葬儀費用の支払いが、この「処分」にあたるかが問題になります。

まず、相続人が自分のお金で葬儀費用を支払うことは、「処分」にあたりません。

そして、相続人が、遺産から葬儀費用を支払うことについては、「遺族として当然営まざるべからざる葬式費用に相続財産を支出するか如きは道義上必然の所為にして「処分」に該当しないとの裁判例があります(東京控判昭和11年9月21日)。これは、かなり古い裁判例ですが、一般に学説上支持されています。

この裁判例からすると、後日、相続放棄の有効性が争われた場合には、葬儀費用の支払いは「処分」に該当しないと裁判官に判断してもらえる可能性が高いといえます。ただし、そのように判断してもらうためには、遺産を葬儀費用に使用したことの証拠が必要となります。