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Q.財産分与を有利に進める方法?

  • 財産分与

 離婚の法律相談では、「財産分与を有利に進めるには、どうすればいいですか?」と聞かれることがよくあります。
 財産分与は法律上の制度であり、裏技のような方法はありません。しかし、以下のことを知っておられた方が、後で後悔しない財産分与ができると思います。

1 割合は原則2分の1
 財産分与については、①夫婦の寄与した程度に応じて清算するべきとする考え方(寄与度説)と、②寄与度が経済的に同じでなくても、法的に平等と評価して、2分の1で清算されるべきとする考え方(平等説)があります。
 裁判所は、清算割合を、特段の事情のない限り2分の1を原則とし、寄与度の差が大きく、これを考慮しないと不公平な場合を例外としています。そして、この特段の事情は、かなり狭く考えられているので、ほとんどの事案が2分の1で分割されます。そこで、例えば、財産分与の話し合い中に、夫から、専業主婦を理由に財産分与の割合を夫70%、妻30%とすることを要求されても、簡単に同意しないことが大切です。

2 債務は原則分与されない
 債務は、その債務を負っている者が負担するものであり、原則夫の債務は妻の債務ではありません(ただし、日常家事債務の例外はあります。)。財産分与において、夫婦のプラスの財産から債務を引いて、残りを2分の1にするという形で債務が考慮されることはあります。
 しかし、プラスの財産がないのに、債務だけを財産分与で押しつけられることはありません。また、夫婦のプラスの財産から引ける債務は、資産形成のための債務(住宅ローン等)や家計維持のための債務(日用品購入等)だけです。ギャンブルや浪費が原因の債務を、夫婦のプラスの財産から引くことは認められません。
 したがって、配偶者にギャンブルでできた債務があったとしても、財産分与が発生する可能性はありますので、簡単に財産分与をあきらめない方がよいです。

3 財産分与の対象財産の調査
 財産分与の対象財産は、同居から別居までに夫婦が形成した共有財産です。すなわち、別居時点の共有財産が財産分与の対象財産です。
 離婚調停では、双方が財産の資料を開示しあって協議が進められます。たとえ、相手が財産の資料を全く開示しなくても、裁判所は説得するだけで財産の調査はしてくれません。
 離婚調停が不成立になり離婚訴訟になった場合には、裁判所から金融機関(銀行、保険会社、証券会社等)に対し、配偶者名義の財産の開示を求める調査嘱託という制度があります。しかし、口座であれば銀行名及び支店名、保険であれば保険会社名、株式であれば取引がある証券会社名(証券会社からの手紙、メール等)を疎明する何らかの資料がないと、裁判所は調査嘱託を行ってくれません。 
 したがって、共働き等で配偶者の財産が全くわからない場合には、財産分与を求めることは非常に困難になりますので、同居中にできるだけ資料を集めておくことが重要です。