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Q.お金を貸して大丈夫ですか?

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  • 裁判

法律相談で、相談者の方から、「この借用書に署名捺印してもらったら、お金を貸して大丈夫ですか?」と聞かれることがあります。このご質問に回答するには、相談者の方がどのような意味で「大丈夫」と言われているのかを確認する必要があります。その結果、回答は次のようにわかれます。

1 証拠として大丈夫か
お金を貸すというのは金銭消費貸借契約という契約です。借用書が金銭消費貸借契約の成立を認める証拠して大丈夫か否か、不十分であれば、どのように修正した方がよいかを、法律相談でアドバイスさせて頂いています。

2 借りた人が返さなくても借用書があれば大丈夫か
たとえ、借用書が金銭消費貸借契約の証拠として十分なものであったとしても、借用書だけで、貸したお金を強制執行により回収できるわけではありません。強制執行をするには、判決書、執行認諾文言付き公正証書等の債務名義が必要です。
 すなわち、借用書は、訴訟提起して判決を取得する時の証拠としての意味があるだけです。訴訟提起をする時に、借りた人が行方不明になっていれば、判決を取得するのに公示送達という特別な手続きが必要になり、費用、時間がかかることもあります。


 そして、苦労して判決を取得したとしても、裁判所は相手の財産を探してはくれませんので、不動産、預金等の強制執行の対象となる財産を自分で探す必要があります。
 権利実現の実効性確保のため、平成15年改正により財産開示制度ができ、令和元年改正により、第三者からの情報取得手続ができました。しかし、まだまだ不十分です。例えば、給与債権差押のために日本年金機構等から情報を取得できるのは、養育費等の請求権、人の生命・身体の損害による損害賠償請求権のみに限られており、貸金債権は含まれていません。


 したがって、どんなにきちんとできた借用書であっても、借りた人が自ら返さなくても借用書があれば大丈夫とはとても言えません。貸す時に保証人を付けたり、担保を設定したりして債権回収のための工夫をしておくことがとても大切です。