- 債務整理
Q.年金と自己破産
債務整理の法律相談で、「自己破産すると、年金は受け取れなくなりますか?」との質問を受けたことがあります。
年金の受給権は、自己破産をしても失われません。そして、年金の受給権は、差押禁止財産であり本来的自由財産であるので、破産管財人による処分の対象にもなりません。したがって、自己破産をしても年金を受け取ることができます。
1 差押禁止財産とは?
差押禁止財産をもう少し詳しく説明すると、差押禁止財産とは、民事執行法や特別法で差押が禁止されている財産です。
例えば、民事執行法131条1号では、「生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具」が差押禁止財産にあげられています。したがって、自己破産しても、通常、自宅内の家財道具が破産管財人によって処分されることはありません。
また、民事執行法上152条1項1号は、「債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権」を差押禁止にしています。例えば、養育費の請求権が、これにあたります。したがって、自己破産しても、養育費の請求権を失うことはありません。
特別法上の差押禁止債権は、年金受給権以外にも、小規模企業共済、中小企業退職金共済、傷病手当金、高額医療費等の支給などがあります。したがって、傷病手当金、高額医療費等の権利も自己破産によって失われることはありません。
2 確定拠出年金
この点で、少し議論があるのが、確定拠出年金です。確定拠出年金は、拠出された掛金とその運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。確定拠出年金は、企業型(掛金を事業主が拠出)と個人型(掛金を加入者自身が拠出)があります。確定拠出年金を退職金制度の一部に位置づけている会社も多いことから、①確定拠出年金を年金と扱うか、②対象金と扱うかについて見解が分かれています。
①確定拠出年金を年金と扱えば、確定拠出年金は破産手続上0円と評価されます。一方、②退職金と扱えば、退職金と同じく、支給見込み額の8分の1で評価し、その評価が99万円を超える場合には、超過額を自由財産と認めないことになります。
企業型・個人型のどちらも、確定拠出年金法32条1項で差押が禁止されているので、本来的自由財産とするのが一般的な見解です。しかし、②退職金と扱う見解から、財団組入を求められることもあります。
なお、確定拠出年金を一時金で受け取った場合には、現金又は預金残高となるので、ほかの財産と合計して原則99万円自由財産の枠内に収まっているかが問題となります。